各科目ワンポイントアドバイス福祉行財政と福祉計画
この科目は、福祉行政・福祉行財政と福祉計画の大きく2つから構成されています。
今回のテーマは「福祉計画」です。 試験勉強をどう進めたらよいかわからない方もいらっしゃると思いますが、「福祉計画」をしっかり理解していれば正解できた問題もありました。 このワンポイントアドバイスでは、福祉計画の相互の連携(「一体のもの」「調和が保たれたもの」「整合性の確保が図られたもの」)について、これだけは確実におさえておきたい最重要事項をまとめてみます。
では始めましょう。
福祉計画のうち、「一体のものとして作成されなければならない」と法律で規定されている組み合わせは何と何でしょうか?
それでは確認です。
市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画
都道府県老人福祉計画と都道府県介護保険事業支援計画
「一体のものとして作成されなければならない」のは、老人福祉計画と介護保険事業計画の組み合わせのみです。
この組み合わせは確実におさえておきましょう。
続いて、福祉計画について、実際に出題された試験問題を通して、理解を深めていきます。
社会福祉士 第31回 問題45を解いてみましょう。
精神保健福祉士の方は、第21回 問題45となります。
福祉計画の策定に際して、相互の計画を一体のものとして作成することが法律で規定されているものを1つ選びなさい。
- 市町村地域福祉計画と市町村老人福祉計画
- 市町村障害福祉計画と市町村障害者計画
- 市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画
- 市町村子ども・子育て支援事業計画と「教育振興基本計画」
- 都道府県介護保険事業支援計画と都道府県地域福祉支援計画
(注)「教育振興基本計画」とは、教育基本法第17条第2項の規定により市町村が定める「教育の振興のための施策に関する基本的な計画」のことである。
皆さん、正解の選択肢を選べましたでしょうか?
それでは、選択肢ごとのポイントをまとめていきます。
選択肢1:調和が保たれたものでなければならない、と規定されています。(老人福祉法第20条の8 第8項)選択肢2:調和が保たれたものでなければならない、と規定されています。(障害者総合支援法第88条第7項)選択肢3:これが正解です。一体のものとして作成されなければならない、と規定されています。(老人福祉法第20条の8 第7項、介護保険法第117条第6項)選択肢4:調和が保たれたものでなければならない、と規定されています。(子ども・子育て支援法第61条第6項) 選択肢5:調和が保たれたものでなければならない、と規定されています。(介護保険法第118条第10項)
福祉計画の相互の連携について、これだけは確実におさえておきたい最重要事項は次の2つです。
まず、「一体のものとして作成されなければならない」ものです。
- 市町村老人福祉計画(老人福祉法第20条の8 第7項)と市町村介護保険事業計画(介護保険法第107条第6項)
- 都道府県老人福祉計画(老人福祉法第20条の9 第5項)と都道府県介護保険事業支援計画(介護保険法第108条第6項)
この組み合わせだけで大丈夫だろうか?と思うかもしれませんが、
- 市町村障害者計画と市町村障害福祉計画は、一体のものとして策定されなければならない。
- 市町村地域福祉計画は、市町村老人福祉計画と一体のものとして策定されなければならない。
- 市町村老人福祉計画は、市町村介護保険事業計画と調和が保たれたものでなければならない。 といった組み合わせがすべて × になる、ということがわかれば、選択肢を絞り込むことが可能です。
これと合わせて、「一体のものとして作成することができる」組み合わせも重要です。
「一体のものとして作成することができる」ものは、
- 市町村障害児福祉計画(児童福祉法第33条の20 第6項)と市町村障害福祉計画(障害者総合支援法第88条第6項)
- 都道府県障害児福祉計画(児童福祉法第33条の22 第4項)と都道府県障害福祉計画(障害者総合支援法第89条第4項) です。
この組み合わせも、今後出題が予想される内容の一つです。
「一体のもの」に着目することで、正解の選択肢を見つけやすくなりますので、しっかりとおさえておきましょう。
福祉計画も毎年確実に出題されます。
ここでまとめた福祉計画の相互の連携のほか、計画期間(3年を一期など)や、
策定が義務なのか、努力義務なのか、任意なのか、については点数に結びつきやすいので、最優先で学習したい内容です。
また、福祉計画については法令の条文を元に出題されていることが多いです。なかなか取り組みにくい内容かとは思いますが、法令に目を通すことで、確実に得点力がアップします。何度も復習し、正解できるようにしましょう。
【116】 29回46
1990年(平成2年)の、いわゆる福祉関係八法改正によって、自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた
【117】 30回48
地域福祉計画は、2000年(平成12年)に制定された社会福祉法により、市町村にその策定が義務づけられた
【118】 27回46
市町村は、地域福祉計画を変更しようとするときは、あらかじめ、当該地域住民の同意を得なくてはならない
【119】 27回46改
社会福祉法では、市町村は、地域福祉計画を策定しようとするときは、あらかじめ、地域住民の意見を反映させるよう努めるものとされている
【120】 28回47
市町村地域福祉計画には、社会福祉を目的とする事業に従事する者の資質の向上に関する事項を定めるものとされている
【121】 28回46
市町村地域福祉計画及び社会福協議会が策定する地域福祉活動計画は、共に社会福祉法に根拠を置いている
【122】 28回46
市町村地域福祉計画及び社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画は、共にその達成を支援するための都道府県による支援計画がある
【123】 28回46
市町村地域福祉計画及び社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画は、共に計画期間を3年として策定することとされている
【124】 30回47
市町村地域福祉計画は5年を一期とする計画である
【125】 28回46改
市町村地域福祉計画及び社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画は、共にその策定及び事業の実施に関しては国庫補助の対象とはならない
【126】 27回48改
都道府県地域福祉支援計画を策定する場合には、福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項が含まれていなくてはならない
【127】 26回48
都道府県地域福祉支援計画は、3年を一期として定めるものとされている
【128】 30回47
市町村老人福祉計画は5年を一期とする計画である
【129】 27回48
介護保険法の成立によって、老人福祉法における市町村老人福祉計画の策定義務はなくなった
【130】 28回47改
市町村老人福祉計画では、市町村介護保険事業計画に定められている事項を勘案する必要がある
【131】 29回47
市町村は、市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画のうち、いずれか一つを策定すればよい
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[116] ×
1990年(平成2年)の福祉関係八法改正によって、自治体に策定が義務づけられたのは、老人保健福祉計画である。地域福祉計画の策定が法定化されたのは2000年(平成12年)の社会福祉法の改正であるが、地域福祉計画の策定は義務づけられていない(社会福祉法第107条、第108条)。
[117] ×
地域福祉計画は、2000年(平成12年)の社会福祉法の制定時に法制化されたが、その時点では市町村に策定は義務づけられず、任意とされた。2017年(平成29年)の社会福祉法の改正により2018年(平成30年)4月からは策定が努力義務となった。
[118] ×
計画を変更する際は、「住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努める」(社会福祉法第107条)という努力義務は規定されているが、義務ではない。
[119] ○
社会福祉法第107条第2項に問題文の内容が規定されている。また、地域住民の他に社会福祉事業経営者やその他の社会福祉活動を行う者もその対象とされている。
[120] ×
市町村地域福祉計画には、社会福祉を目的とする事業に従事する者の資質の向上に関する事項はない。これは、都道府県地域福祉支援計画に定めるべき事項である(社会福祉法第108条第1項第3号)。
[121] ×
社会福祉法に根拠を置いているのは、行政計画である市町村地域福祉計画のみである。地域福祉活動計画の策定主体は社会福祉法第109条及び第110条の規定に基づく社会福祉協議会であるが、民間活動計画であり、社会福祉法に法的根拠はない。
[122] ×
都道府県による支援計画があるのは、市町村地域福祉計画のみである。都道府県は、市町村地域福祉計画の達成に資するために、各市町村を通ずる広域的な見地から、都道府県地域福祉支援計画を策定する(社会福祉法第108条)。
[123] ×
市町村地域福祉計画の計画期間については、社会福祉法に特段の定めはない。ただし、「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針のあり方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」(社会保障審議会福祉部会、2002年)では、他の計画との調整が必要であることから、計画期間を概ね5年とし3年で見直すことが適当であるとしている。
[124] ×
市町村は、社会福祉法第107条に基づき、市町村地域福祉計画を策定するよう努めることとされているが、計画期間は定められていない。
[125] ○
市町村地域福祉計画及び地域福祉活動計画は、高齢者、障害者、児童の各分野における法定の計画と異なり、住民の参加によってそれらを総合的に調整することが目的であり、国庫補助の対象ではない
[126] ○
都道府県地域福祉支援計画は、「福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項」が含まれていなければならない以外に、市町村の地域福祉の支援に関する3つの基本事項を盛り込むべきとされている(社会福祉法第108条)。都道府県地域福祉支援計画に盛り込むべき3つの事項は、①「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項」、②「市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項」、③「社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項」である。
[127] ×
都道府県地域福祉支援計画は社会福祉法に規定されているが、計画期間に言及した規定はない。ただし、「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」において、計画期間はおおむね5年とし、3年で見直すことが適当、とされている。
[128] ×
市町村老人福祉計画については、計画期間は定められていない。
[129] ×
市町村老人福祉計画については、引き続き策定義務がある(老人福祉法第20の8第1項)。ただし、介護保険法における市町村介護保険事業計画と一体のものとして策定されなければならないとされた(同条第7項)。
[130] ○
市町村老人福祉計画(老人福祉法第20条の8)では、老人福祉事業の量の目標を定めるに当たっては、市町村介護保険事業計画(介護保険法第117条)に定められている事項(介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込、第1号訪問事業及び第1号通所事業の量の見込み)を勘案する必要がある。
[131] ×
市町村は、市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画のいずれも策定しなければならない(老人福祉法第20条の8第1項及び介護保険法第117条第1項)。なお、両者は「一体のものとして作成されなければならない」(老人福祉法第20条の8第7項及び介護保険法第117条第6項)。