炎症と腫瘍に関する記述 である

2016年 07月 05日

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

30-24 疾患に伴う変化に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)心停止は、脳死の判定に含まれる。
(2)浮腫は、血漿浸透圧が上昇すると生じる。
(3)肥大は、組織を構成する細胞の容積が増大する現象である。
(4)肉芽組織は、炎症の急性期に形成される。
(5)肉腫は、上皮性の悪性腫蕩である。

(1)× 心停止は、脳死の判定に含まれない。
死とは、呼吸機能、循環機能、中枢神経機能が不可逆的に停止した状態をいう。心臓死の判定は、死の三徴候によって行われる。死の三徴候とは、①呼吸の停止、②心拍動の停止、③瞳孔散大である。脳死とは、呼吸機能と循環機能は保たれているが、中枢神経機能が不可逆的に停止した状態をいう。循環機能は保たれているので、心停止は起こしていない。呼吸機能は、脳幹機能が呈しているので自発呼吸はないが、人工呼吸器により保たれている状態である。

(2)× 浮腫は、血漿浸透圧が低下すると生じる。
毛細血管と間質組織の水の移動を決定する要因は、毛細血管内の血圧(静水圧)と血漿浸透圧である。毛細血管圧は、血管内から血管外へ水を押し出す圧力であり、動脈側で高く、静脈側で低い。血漿浸透圧は、血漿たんぱく質(特にアルブミン)により生じる圧力であり、膠質浸透圧ともいう。血漿浸透圧は、血管外から血管内に水を引き込もうとする。血漿浸透圧は、動脈側の毛細血管圧と静脈側の毛細血管圧の間にあるので、水は毛細血管の動脈側では血管外に押し出され、静脈側では血管内に引き込まれる。こうして間質の水は循環する。浮腫とは、間質の水が異常に増加した状態なので、血管が出でてくる水の量が、血管内に引き込まれる水の量より多いときに出現する。血管外に出る水の量が多くなる主な要因は、動脈圧の上昇と循環血液量の増加である。血管内へ引き込む水の量が少なくなる主な要因は、静脈圧の上昇と血漿浸透圧の低下である。

(3)〇 肥大は、組織を構成する細胞の容積が増大する現象である。
肥大とは、臓器や組織が、正常な構造や形を損なうことなく、正常以上に大きくなることをいう。この時、細胞数は増加することなく、細胞の容積が増大する。これに対して、細胞の容積は変わらないが、細胞数の増加に伴って臓器・組織の容積が増加することを過形成という。

(4)× 肉芽組織は、炎症の慢性期に形成される。
炎症とは、局所の組織細胞障害や作用した障害因子に対する生体の局所的防御修復反応である。急性炎症とは、障害に対し迅速に反応が起こる炎症であり、典型的には発赤、熱感、腫脹、疼痛が出現する。主に微小血管反応が主体で、血流の増加、血漿たんぱく質の滲出、好中球を主体とする白血球の浸潤が特徴である。通常は、短期間のうちに炎症反応は終息し、痕跡を残さず治癒することが多い。一方、慢性炎症は、数週間から数か月にわたり炎症反応が継続するもので、リンパ球を主体とする白血球の浸潤が出現する。慢性炎症の病巣ではマクロファージが活性化され、周辺の組織の破壊、免疫担当細胞の動員、線維芽細胞・新生血管の増殖など反応が起こって肉芽組織を形成する。肉芽組織は、最終的には細胞成分が減少し、瘢痕化する。血管新生は、慢性炎症において肉芽組織ができたり、線維化が進んだりするときに必要になるものなので、炎症原因物質の刺激直後の急性炎症では起こらない。

(5)× 肉腫は、非上皮性の悪性腫蕩である。
腫瘍とは正常な体を構成する細胞から発生する組織の異常増殖である。腫瘍は、実質(腫瘍細胞)と間質(腫瘍細胞が増殖するのに必要な足場、栄養、酸素などを供給する)からできている。間質は正常な細胞からできているので、腫瘍の増殖は間質を介して宿主に完全に依存している。一般に「癌」は悪性腫瘍全般を指し、「癌腫」は上皮性悪性腫瘍を、「肉腫」は非上皮性悪性腫瘍を指す。臨床的には予後が良好なものを「良性(benign)」、不良なものを「悪性(malignant)」とする。病理組織学的には、増殖様式により圧排性増殖のみを示すものを「良性」、浸潤性増殖を示すものを「悪性」とする。

正解(3)

by kanri-kokushi | 2016-07-05 15:33 | 第30回国家試験 | Comments(0)

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2021年9月19日

炎症と腫瘍に関する記述 である

35-023 炎症と腫瘍に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)急性炎症では、血管透過性は低下する。
(2)慢性炎症でみられる浸潤細胞は、主に好中球である。
(3)肉芽組織は、組織の修復過程で形成される。
(4)良性腫瘍は、悪性腫瘍と比べて細胞の分化度が低い。
(5)肉腫は、上皮性の悪性腫瘍である。

正解と解説を見る

正解:3

【解説】
(1)×:急性炎症では、血管透過性は亢進する。
炎症によって血管が損傷して穴があくため、血管の透過性(通りやすさ)は亢進します。浮腫の原因の1つですね。

(2)×:慢性炎症でみられる浸潤細胞は、主にリンパ球である。
浸潤細胞とは、広まっていく細胞のことです。

炎症には急性炎症と慢性炎症があります。

急性炎症は、炎症の原因物質が何か不明ですので、自然免疫による反応となるため、好中球が中心となります。
一方、慢性炎症は、何度か繰り返されている炎症ですので、獲得免疫による反応となるため、リンパ球が中心となります。

(3)○:肉芽組織は、組織の修復過程で形成される。

(4)×:良性腫瘍は、悪性腫瘍と比べて細胞の分化度が高い。
分化度とは、細胞がどれだけ正常な細胞に分化しているかの度合いです。

良性腫瘍は、ほとんど正常な細胞へと分化しているため、分化度は高くなります。
一方、悪性腫瘍は、正常な細胞へと分化することが少なく、異型化してしまうため、分化度は低くなります。

(5)×:肉腫は、非上皮性の悪性腫瘍である。
腫瘍(がん)には、上皮性の腫瘍と、非上皮性の腫瘍があります。

上皮性とは、皮膚の表面、消化管や気道などの内側、臓器などを覆う細胞のことをいいます。したがって、上皮性の腫瘍とは、表層部にある腫瘍という意味です。

一方、非上皮性とは、上皮ではない部位、具体的には骨や筋肉、血管などの細胞のことをいいます。したがって、非上皮性の腫瘍とは、内側にある腫瘍という意味です。

この非上皮性の腫瘍を肉腫といい、骨肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫などがあります。

また、上皮性がんに対して、浸潤性がんというのもあります。

上皮性がんはある特定部位の表面に固まって存在している腫瘍ですが、浸潤がんは特定部位の周囲に散らばったり染みたりした形で存在している腫瘍です。

ちなみに、上皮性の腫瘍(≒手術で切除できる腫瘍)を「癌」、浸潤性の腫瘍(≒手術で切除できない腫瘍)を「がん」などと表記をわけています。


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✕1 .肥大は、炎症の徴候に含まれる。

→誤りです。

肥大は、炎症の徴候に含まれません

炎症の4兆候は発赤、熱感、腫脹、疼痛です。

炎症は、物理的刺激(火傷や凍傷など)や化学的な刺激(化学薬品接触など)や、

ウイルスなどの微生物の感染に対して起こす生体の防御反応の1つです。

✕2 .線維化は、炎症の慢性期より急性期で著しい。

→誤りです。

線維化は、炎症の急性期より慢性期で著しい症状です。

線維化とは、組織中の結合組織が異常に増殖してしまう現象のことです。

心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓など、脳以外のほぼ全身の主要な臓器で

線維化がおこる可能性があります。

✕3 .肉芽腫は、良性腫瘍である。

→誤りです。

肉芽腫は、腫瘍とは区別されています。

肉芽腫とはマクロファージ系の細胞を中心とし、

他の炎症細胞も集積して形成される境界が明らかな慢性炎症病巣です。

✕4 .肉腫は、上皮性腫瘍である。

→誤りです。

肉腫は、上皮性腫瘍ではなく、非上皮性腫瘍です。

肉腫は上皮性間葉組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管、リンパ管、筋、腱、滑膜、骨、軟骨)および

外胚葉由来の末梢神経組織の性質を具えた腫瘍のことを指します。

〇5 .悪性腫瘍は、浸潤性に増殖する。

→正解です。

悪性腫瘍は、浸潤性に増殖します。

湿潤性は、悪性腫瘍の特徴の1つです。

その他にも悪性腫瘍の特徴として、細胞の異常増殖、

遠隔転移、再発を起こすことがあげられます。